矯正治療中の痛みと対処法

矯正治療に伴う痛みについて

 

矯正治療=痛い

というイメージをお持ちかもしれませんが痛みについて知っておくとそんなに怖がることではありません。

 

矯正治療に伴う痛みは大きく分けて2種類。

1、歯が動くときの痛み

2、矯正装置によるキズの痛み

 

1、歯が動くときの痛みについて

なぜ痛むのか?

なぜ痛みを生じるのかは歯が動くメカニズムに起因します。

歯に矯正装置を装着し矯正力を与えることによって歯は動きます。

どういうメカニズムで歯が動くのかを簡単に説明いたします。

歯は歯冠(しかん)と歯根(しこん)からできています。

歯冠と歯根

歯根は歯根膜という靭帯に覆われた状態で骨に植立しています。普段、物を噛んだ時に固いな、とか、柔らかいなと感じるのはこの歯根膜がクッションのように変形することで感じているのです。

植立状態

ここで歯に矯正力(持続的な弱い力)を与えると歯根膜がわずかに変化します。

押された側を圧迫側、反対側を牽引側といいます。

矯正力をあたえると

圧迫側ではそのままでは窮屈なので骨を破壊してスペースを稼ごうとします。そこで破骨細胞(はこつさいぼう)という骨を壊す細胞が出現します。

反対に牽引側ではスペースが余り過ぎているので、骨芽細胞(こつがさいぼう)という骨を作る細胞が出現しスペースを埋めていきます。

骨芽細胞、破骨細胞

このような生体反応が起こることで歯は動きます。

こういった反応は炎症反応に近いため痛みを生じるわけです。また、圧迫側では歯根膜が押し潰され、毛細血管の血流障害が生じています。血行障害による痛みなので、歯が動く痛みは虫歯や切り傷の時の鋭い痛みというよりは、肩こりや筋肉痛のような鈍い痛みとして感じることが多いのです。

歯が動く仕組み

 

痛みはどれくらい続くのか?

装置を調整した翌日が最も痛みを感じ、その後2~3日間痛みが続き1週間もすればほとんど痛みを感じなくなるといわれています。

また、この時の痛みを『痛い』と感じる方もいれば『違和感』『むず痒い』などと感じる方もいます。

 

対処法は?

昔から温めの食塩水でうがいすると痛みが和らぐといわれています。これは食塩水によって浸透圧が変化し痛み軽減につながる最もお手軽な対処法です。

歯ぐきのマッサージも痛みを和らげる方法の一つです。血行障害により引き起こされた痛みなのでマッサージにより少しでも血流を良くしてあげると痛みは軽減します。ソニッケアなど、電動音波ブラシを用いると歯もキレイにでき、マッサージ効果も期待でき一石二鳥です。

どうしても痛みが我慢できない場合は飲んだことのある痛み止め(ドラッグストアなどで手に入るものでOK)を服用しても構いません。しかし、上記にもあるように歯が動くのは一種の炎症です。痛み止めは炎症を抑えてしまうので歯の動きが遅くなってしまうことも考えられます。鎮痛剤服用は最後の手段に取っておいたほうが良さそうです。

痛み=歯が動いている、とポジティブにとらえて乗り切る方もいます。

痛みが強い2~3日は柔らかい食べ物や、普段より小さく切って食事していただくことをお勧めします。

 

2、矯正装置によるキズの痛みについて

キズって?

矯正治療とは歯または顎に装置を付けることによって治療を進めていきます。逆に言えば装置を用いないと治療は進めることができません。

しかし、装置は人体にとっては異物であり(もちろん有害物質は一切含まれていませんが)装置装着から2~3か月間は違和感があります。

その間、装置によって頬っぺや舌などの粘膜にキズができてしまい、口内炎になることがあります。

口内炎は食べ物や飲み物がしみてしまったり、装置が直接当たるとさらに痛みが走ったりします。

 

対処法は?

 

すが矯正歯科クリニックでは装置を装着されたすべての方にホワイトワックスというカバー剤をお渡ししております。

使い方は簡単。

口内炎に当たる部分の装置をホワイトワックスで覆っていただくことで装置のデコボコ感が無くなり刺激を和らげてくれます。適度なサイズにちぎって使用します。

ホワイトワックスの使用にはちょっとしたコツがあります。

お口の中は唾液で満たされており常に濡れた状態です。濡れた状態の装置にホワイトワックスを付けてもすぐに取れてしまいます。そこでティッシュやコットンで該当する装置とその周りの部分の水分をよくふき取って乾燥した状態でワックスを付けてみてください。そうすると意外と長持ちします。

例えば、左上の一番奥の装置(部分)が痛い場合、

ワックスを覆いたい装置よりも少し大きめにちぎります。

装置を覆います。

ほかの装置の場合も同様です。

また、同時に口内炎用の軟膏を塗っていただくと治りが早くなります。

軟膏もワックス同様、濡れた状態で塗布しても薬効成分が効く前にすぐに流れ落ちてしまいます。口内炎はこすると痛いですが、ティッシュやコットンで痛くない程度にトントンとなるべく水分を取った状態で塗布していただくと長時間流れ落ちることなく効果を発揮します。

治療中、頬っぺたや舌を噛んでしまったり、ワイヤーの切断やブラケットの脱離などでキズができてしまった場合も同様の処置をしていただくと痛みは軽減します。

ホワイトワックスは熱可塑性といって温度が高いと柔らかく、冷たいと固くなる性質があります。使用しないときは冷蔵庫など涼しい場所に保管してください。

どうしてもすぐに痛みを取ってほしいという方にはレーザー照射による口内炎治療も行っております。

レーザー光には殺菌・麻酔・止血作用があります。

レーザー照射後、血液成分によりフィブリンネットを形成するため治癒が早く、治療直後~1日ほどで痛みが無くなります。

 

その他、口内炎というよりは装置自体が粘膜に食い込んで痛みを引き起こす場合があります。装置は歯や骨を動かすために装着しますが、歯が動いてくると装着した時点よりも装置の角度や位置関係も動くことになります。ごく稀にですが、歯が動くことにより装置が粘膜に食い込むケースがあります。応急処置としてはホワイトワックスや口内炎軟膏を用いていただき、なるべく早めに当院にご連絡ください。

 

痛みやその対処法を知っておくと不安も和らぐと思います。

すが矯正歯科クリニックでは快適な矯正ライフをサポートいたします!